ネット広告史

将来への展望

インターネット広告の誕生から十数年が経った今日に至っても,インターネット広告の登場によって,マスメディア広告の市場が落ち込んだ,という表面的な分析が言説として流布されることが多い。マスメディア広告とインターネット広告は,同じニーズや市場を…

インターネット広告の限界

これまでに述べてきた通り,インターネット広告はもはや,我々が知る従来の「広告」ではなく,すでに自分の欲望が具体的に意識されている人に向けたPOP広告である。例えて言うならば,「靴を買いたい」と思っている人に対して,数多くの靴ブランドの中から自…

考察

インターネット広告史を概観して得られる結論としては,インターネット広告は,本質的にレスポンス広告だということである。今日の広告主は自分たちのコンテンツ露出のためにインターネット上の広告枠のスペースを買うのではなく,そこにリンクを貼ることで…

「グーグル」時代へ(〜現在)

2002年,グーグルは検索連動型広告「アドワーズ」のサービスを開始した。これは,広告主が予め入札しておいたキーワードが検索された場合,その検索結果画面にテキスト文字で構成された広告を表示するサービスである。 この広告は表示されただけでは費用は発…

ITバブル崩壊後の展開(2001年〜)

2001年のいわゆる「ITバブル崩壊」により,それまで毎年倍増の勢いで成長を続けてきたインターネット広告市場(媒体費)の伸びも,「日本の広告費」によると,2001年は前年比124.6%(735億円),2002年は115.0%(845億円)に留まり,その成長に急ブレーキが…

2方向に分かれた対応

これらの課題に対する対応は,大きく2つの方向に分かれた。 ひとつは,技術の進化を反映した「リッチメディア」化によって,クリック率の向上を狙うという方向である。従来,画像や文字を用いていた広告表現に,動画や音声を加えることで表現力を高めたり,…

明らかになった課題(〜2000年)

1990年代後半,インターネット広告ビジネスは本格化し,様々なパターンの広告商品メニューと課金モデルが次々に開発された。CD-ROMに保存された広告を表示する代わりにインターネットに一定の時間だけ無料で接続できるCD-ROM連動型サービス,あるいはインタ…

インターネット広告の特徴

従来のマスメディア広告の延長線上の思考で発展していったインターネット広告であるが,従来の広告にはない新たな特徴を備えていた。それはハイパーリンクが活用できる点である。広告接触者は広告をクリックすることで,その広告に関してより詳細な情報を記…

マスメディア広告モデルの適用

新たな広告媒体としてのインターネットに着目した広告代理店は,従来のマスメディアにおける広告のビジネスモデルをインターネットにも適用させようした。その展開においては,当時の広告業界にとって理解しやすい,バナー広告をその代表とするディスプレイ…

当時の広告ビジネスにおける行動原理

わが国の広告代理店は,テレビ放送開始時に「電通」が果たした役割に見られるように,新しいメディアの立ち上げに関与し,その中でより良い広告スペース,広告枠を確保することが,ビジネスにおける勝利につながる(4)という認識があった。 1980年代後半には…

バナー広告の誕生

1993年,「モザイク(Mosaic)」という名のインターネットブラウザが開発され,Webサイトの文書と画像を,パソコンの同一画面上に表示させて閲覧することが可能となった。現在まで続くWebサイト利用スタイルの始まりである。同時にインターネットの商用利用…

インターネット以前のデジタル広告

インターネット広告が誕生する1994年以前に存在したデジタルメディアにおいて,広告掲載はどの程度行われていたのであろうか。 インターネット時代が訪れる以前,アメリカではコンピュサーブ(CompuServe),AOL,わが国ではニフティサーブ,PC-VANなど多くの…

広告の機能とその効果

広告の機能と効果については,マクロ・ミクロ多様な視点により様々なとらえ方ができ,既に多くの研究がなされている。一般的には,情報の送り手である広告主にとって,伝達機能による製品などに関する情報の提供,説得機能によるニーズの顕在化や行動意図の…

広告の分類

広告は,一般にプロモーション(販売促進)活動の一部であるとされる。販売促進という用語の定義について,清水公一は以下の通り述べている。 「販売促進には広義と狭義があり,広義の場合はプロモーションといい,狭義の場合はセールス・プロモーションとい…

広告の定義

学術的に広告の定義は様々である。まず,わが国の代表的な広告研究者の一人である清水公一による定義を以下に挙げる。 「広告とは企業や非営利組織または個人としての広告主が,自己の利益および社会的利益の増大化を目的とし,管理可能な非人的媒体を使って…

問題へのアプローチ方法

インターネット広告に関する研究は,その広告効果に関するものが中心で,インターネット広告の歴史的変遷に着目した研究はほとんど見られない。 本研究においては,わが国におけるインターネット広告の登場以降の変遷を追うことで,インターネット広告という…

本研究の背景と目的

2008年1-12月の日本の総広告費は66,926億円,前年比95.3%と5年ぶりの減少となった一方で,インターネット広告費(媒体費および広告制作費)は,前年比116.3%の6,983億円となり,総広告費における構成比も10.4%と遂に1割を超えた[1]。インターネット広告と…

論文要旨

要旨インターネット広告は,「広告」と呼ばれていながらもその本質は従来の広告とは大きく異なるものであることを,その歴史研究を通じて明らかにした。なぜインターネット上で広告ビジネスが展開されるようになったのか。その後に生じた広告主やインターネ…

インターネット広告の歴史的変遷[目次]

インターネット広告の歴史的変遷についての拙論が掲載された学会誌。 もう発行後1年以上経つのですが、CiNiiには、未だに前半部分しか掲載されておらず。 このままだと発信のタイミングとチャンスを逃してしまいそう。 なので、ここでも順次発信していきたい…

学会誌に論文が載った。けど、

修士論文を学会誌に投稿して、一応採録された。*1 査読の段階でいろいろ言われたことは、 ふーん、それが学術の世界のお作法なのね、 ということで、まぁ、理解は出来たけど。 今さらこういう世界に入っていくのはメンドクサイな。 おいらは実務の世界でがん…

新テーマは、「エイプリルフール」のネットメディア史?!

すでに1週間遅れなので、ややマヌケですが。 ネットでのエイプリルフール祭りって、いつ頃からあったっけ。 今年は、どこも安易に「3D」ネタばっかりでしたね。 結構、あちこちのサイトでカブってました。nifty、goo・・・。 いきなりですが、これって、研究…

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書

4、5年前だったかなぁ、 五反田のあおい書店で立ち読みしてたときに、見かけた本。 その時は、平日の日中で、 なぜか散歩(?)の途中だったし、しかも手ぶらだった(?)もんで 今度どっかで買おう〜!と思って、棚に戻した。 そう思ったはずなのに、しばらく忘れ…

Webサイトに広告が載るようになった理由

インターネット以前にも、 パソコン通信、キャプテン(ビデオテックス)などの 「ニューメディア」が存在しました。 それらのメディアでは、 広告掲載が一般化することはありませんでした。 もちろん、パソコン通信のフリーテーマ掲示板に せっせと三行広告…

バナー視聴価値(笑)

まずはこちらを。 バナー広告には、広告主企業の指定する任意の情報が含まれる。これはバナー広告の掲出が、視聴者が企業のロゴ、商品名、広告コピー、画像等を視聴することを意味するため、一定の広告効果を期待できることは明らかである。(その情報量から…

インターネット広告史の始まり

「世界初のインターネット広告」は、 アメリカの雑誌「Wired」が、1994年10月27日に公開した Webマガジン「Hot Wired」に、掲載されたバナー広告群である というのが、世の通説となっているようです。 それがもう当然のこととされているようなのですが 誰も…

修士論文提出

今年は、わりと時間に余裕があったので(?!) 積年の懸案事項だった「修士論文」を無事書き上げ 本日、大学に提出することができました。 研究テーマは、 インターネット広告の歴史的変遷とその本質。 いろんなことを調べて いろんなことに気づき、いろんなこ…