広告の分類


 広告は,一般にプロモーション(販売促進)活動の一部であるとされる。販売促進という用語の定義について,清水公一は以下の通り述べている。

 「販売促進には広義と狭義があり,広義の場合はプロモーションといい,狭義の場合はセールス・プロモーションという。したがって,プロモーション・ミックス要因には人的販売促進,非人的販売促進(広告),狭義の販売促進(セールス・プロモーション)があるというのが定説である」[5](括弧内筆者)


 すなわち販売促進の要素には,人的販売,広告,セールス・プロモーション(SP)があるとしており,SPについては「広告ならびに人的販売を補足しそれらの活動をいっそう効果的にする活動である」[5]という定義をあわせて紹介している。亀井明宏らは,広告とSPの相違点を以下の通り説明している。

 「『広告』がメッセージによって展開されるものであるのに対して,『プロモーション』ないし『(狭義の)販売促進』は基本的にメッセージ以外のモノ,サービスあるいは金銭といった要素を手段として展開されるという点で,明確に区分可能なものとされている」[6](括弧内筆者)


 これらの認識を背景に,わが国で広告は,「マスメディア広告」と「SP広告」という分類がなされる。マスメディア広告とは新聞,雑誌,ラジオ,テレビのマスメディア4媒体において,不特定多数に向けて展開される広告である。一方SP広告は,狭義の販売促進活動と不可分であるような広告を指し,特定された消費者に対して購買や行動を直接的に促す広告である。ただし,実務上マスメディア広告とSP広告とは,使用される媒体によって区分されているのが実態であり,屋外広告,交通広告,折込広告,DM広告,POP広告などがSP広告と呼ばれる。


 SP広告で使われる媒体を,狭義の販売促進活動と重複して使われることが多い媒体ととらえるのか,あるいは単にマスメディア4媒体以外の媒体として括るのかによって,インターネット広告の位置付けのとらえ方は異なってくる。


 インターネット広告については従来,統計上SP広告に含める場合と,マスメディア広告でもSP広告でもない,全く別のものと考える場合とがあった[7]。わが国の広告会社電通による「日本の広告費」では,総広告費の推定にあたって,その範囲を以下の通り規定している。

  1. マスコミ4媒体広告費:新聞,雑誌,ラジオ,テレビのマスコミ4媒体に投下された広告費
  2. 衛星メディア関連広告費:衛星放送,CATV,文字放送などに投下された広告費(媒体費および番組制作費)
  3. インターネット広告費:インターネットサイト上の広告掲載費(モバイル広告を含む)および広告制作費(バナー広告等の制作費および企業ホームページの内,商品やサービスのキャンペーン関連の制作費)
  4. プロモーションメディア広告費(屋外,交通,折込,DM,フリーペーパー,フリーマガジン,POP,電話帳,展示,映像他)


 これが現在実務界での一般的な広告の範囲と分類の定義である。また「日本の広告費」では,その2007年の改訂で,SP広告費の呼称をプロモーションメディア広告費に変更するとともに,大区分の表記順を変更している。それ以前は,マスコミ4媒体広告費,SP広告費,衛星メディア関連広告費,インターネット広告費の4項目であり,この順序で記述されていた。


 当初,衛星放送やインターネットなど新しいメディアでの広告は,「広告=マスメディア広告+SP広告」という世界観の外側に,その他広告として順に付け加えられていった。2007年に至って,それら新しい広告の位置付けが,マスメディア広告とSP広告の中間に位置するものと再定義されたと読み取ることができる。


 また「日本の広告費」の2007年改訂では,インターネット広告費の推定にあたって,従来の媒体費に加えて広告制作費を追加した。この広告制作費には,バナー広告等の制作費だけでなく企業ホームページの内,商品やサービスのキャンペーン関連の制作費までもが含まれている。インターネット広告は,狭義には媒体スペースを購入する広告であるが,定義によっては,自社Webサイトを通じた情報発信をインターネット広告の一部として含める場合すらある[8]。このように,インターネット広告は,広告という名を冠しながらも,その範囲と定義は今日でも流動的であり,曖昧なままである。

  • 参考文献

[5]清水公一:『広告の理論と戦略(第14版)』創成社,p.72,(2005).
[6]亀井明宏,疋田聰:『新広告論』日経広告研究所,p.23,(2005)
[7]株式会社日本総合研究所,紅瀬雄太,足代訓史:『ビジネスの新常識 ネット広告のすべて』ディー・アート社,p.18,(2006).
[8]同上,p.23.



目次および出典