インターネット広告の特徴


 従来のマスメディア広告の延長線上の思考で発展していったインターネット広告であるが,従来の広告にはない新たな特徴を備えていた。それはハイパーリンクが活用できる点である。広告接触者は広告をクリックすることで,その広告に関してより詳細な情報を記したWebサイトや広告主のWebサイトなどを閲覧することができる。広告主から見た場合には,ハイパーリンクという特性を活かしてクリックを促すことによって,資料請求や商品購入ページなどに消費者を直接誘導することができるという従来の広告にない機能を手に入れることとなった。これが先に述べた「インタラクティブメディアとしての価値」と呼ばれたものである。さらに双方向メディアであるインターネットは,広告のクリック数によってその効果が明確に把握できる,という独自の特徴を備えていた。


 インターネットを使った航空券予約や書籍販売などのビジネスで成功例が出始め,インターネット広告が広がり始めた1997年,木村達也が著した「日本におけるオンライン広告の現状と課題」と題する論文では,インターネット広告は「そのとらえ方によってマス・メディア,ターゲット・メディア,インターラクティブ・メディアのいずれにも当てはめることができる」[13]とされた。またバナー広告は,新しいブランドを構築したりするには向いておらず「新たなオンライン・メディアにおいてブランドをさらに拡張するために用いるべきである」[14]と述べている。つまり,マスメディア広告などの活動により構築された既存ブランドをインターネット上で展開する際のツールが,バナー広告であると考えたのである。


 1999年に著された論文の中では,当時のインターネット広告の定義の一つとして,アメリカのインターネット広告・マーケティング会社「ゼフグループ(The Zeff Group)」による「インターネット広告とは,広告対象となる商品やサービスのブランドを知覚させることに主な焦点を当てている既存の広告と,実際の販売に結び付けていこうとするダイレクト・マーケティング・コミュニケーションの領域の交わったものである」とする定義が紹介されている[15]。ここではインターネット広告は,インプレッション効果による認知獲得とレスポンス効果による購買誘導,両方の効果を生み出すハイブリッド型広告であるとされているのである。


 またわが国で2000年に発行された実務書においても同様に,インターネット広告の特質を以下の通り説明している。

 「もちろん,インターネット広告にも,通常のメディアが持っているような「メッセージを消費者に伝えるという告知機能」はあるが,それに加えて,『広告を見て関心を持った消費者のレスポンスを,その場でダイレクトに喚起することができる』という新しい付加価値を備えていることが特徴だ」[16]


 媒体のスペースを広告枠として販売するという従来型広告の特性を象徴する形でインターネット上に登場したバナー広告は,テレビや新聞と同様に,媒体に接触してくる人を待ち構える形態の広告である。この点では,閲覧者が与えられる情報を一方的に受容するというメディア接触スタイルを前提とした従来型広告のひとつである。


 だがここまで見てきた通り,バナー広告には新たな特徴があった。バナー広告は露出し閲覧させることだけを目的とするのではなく,クリックという行動を利用者に促すことになったことで,従来の広告とは違う,新しい広告への第一歩を踏み出すこととなった。


 インターネットは,自らの関心に合わせて情報を探索する能動的利用スタイルが中心となるため,同じ興味を持つ人々,特定の属性を持つ人たちが集まるようなWebサイトが生まれやすかった。したがって広告主にとっては,従来のマスメディア広告に比べて,広告露出をその効果が高い層へと絞り込むターゲティングが容易であった。またネットショッピングの普及により,広告する商品やサービスに対して関心や購入意欲が高い人々に対しての接触が可能となった。さらにインターネットでは,そのインタラクティブ性を活かすことで,広告に対するレスポンスをクリック数という形でコストをかけず即時に測定できる。


 これらの利点もあって,インターネット広告における広告主の期待は,インプレッション効果だけでなくレスポンス効果へと拡大していくことになる。

  • 参考文献

[13]木村達也:『日本におけるオンライン広告の現状と課題』吉田秀雄記念事業財団,p.16, (1998).
[14]同上,p.29.
[15]川辺なおり:『インターネット広告のコミュニケーションに関する研究 −広告コミュニケーションと受け手の特徴−』吉田秀雄記念事業財団,pp.5-6, (2000).
[16]インターネット・マーケティング研究会,村田誠,菅野龍彦,原野守弘:『インターネット広告2000』ソフトバンク パブリッシング,p.112, (2000).



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