広告の定義


 学術的に広告の定義は様々である。まず,わが国の代表的な広告研究者の一人である清水公一による定義を以下に挙げる。

 「広告とは企業や非営利組織または個人としての広告主が,自己の利益および社会的利益の増大化を目的とし,管理可能な非人的媒体を使って,選択された生活者や使用者に,商品,サービス,またはアイディアを,広告主を明確にして告知し説得するコミュニケーション活動である」[3]


 ここでは,広告を掲載するメディアを「管理可能な非人的媒体」としている点に着目したい。一方,アメリカ・マーケティング協会(American Marketing Association,以下AMA)では,「Advertising」を「any paid form of non personal presentation and promotion of ideas, goods or services by an identified sponsor」と定義している。広告で用いるメディアについて,清水が「管理可能な」としている部分を,AMAでは「paid form(有料形態で)」としており,清水の定義に比べてより限定的にとらえている。わが国では,折込チラシやダイレクトメール(DM)なども「広告」と呼ぶように,広告という言葉でとらえる活動の範囲がアメリカよりもやや広いことが,ここに反映されている。一方,AMAの定義においては媒体のスペース,枠を有料で購入するという点が明確になっている。


 わが国でも実務界においては,「広告」と,媒体への支払いが発生しない「広報」とを区別する必要性という観点もあって,広告は,広告主が他者の持つ媒体上に確保された広告スペースを購入し,自らのコンテンツを出稿する活動をさすものとされることが一般的である。本稿においても,その考えに基づいて論を進める。


 またわが国における広告代理業の歴史は,明治時代の新聞発行において,広告スペースを商人に売ることで記事収集に要する経費を補うにあたって,その媒体スペースを販売する代理店が必要とされたことに始まるとされる[4]。それ以来,わが国における広告ビジネスの展開においては,広告代理店が深く関与し続けることとなる。それはインターネット広告においても同様であった。

  • 参考文献

[3]清水公一:『広告の理論と戦略(第14版)』創成社,p.8,(2005).
[4]同上,pp.47-48.



目次および出典