問題へのアプローチ方法


 インターネット広告に関する研究は,その広告効果に関するものが中心で,インターネット広告の歴史的変遷に着目した研究はほとんど見られない。


 本研究においては,わが国におけるインターネット広告の登場以降の変遷を追うことで,インターネット広告という「新しい広告」の受容過程を明らかにするとともに,社会がインターネット広告に求めてきたものを明らかにしていく。


 このことを通じて,広告におけるインターネット広告の位置づけを浮き彫りにするとともに,その限界を明らかにする。副次的には,インターネットがメディアとして受容され,普及していった過程が明らかになると考える。


 世界初のインターネット広告は1994年10月に誕生したとされ[2],わが国でも1996年4月に開設された「Yahoo! JAPAN」が,バナー広告の取り扱いを開始した。それ以降のわが国におけるインターネット広告の諸様態,ビジネスモデル,クリエイティブの変遷などを検証し,インターネット広告の歴史を概観する。その上で特徴的な新しい広告メニューを取り上げ,それぞれが登場したことの社会的,技術的背景について,先行諸研究もふまえた多角的な分析を行う。それぞれの新しい広告スタイルがどのようにして生まれ,その後どう衰退していったか,なぜ他のものに取って代わられたのかを検討する。


 また歴史的変遷を正しくとらえるために,それぞれの時代おいてインターネット広告はどういう効果があると認識されていたのか,そしてその評価は時代を追ってどのように変遷していったのかを,過去の文献や論文から把握する。具体的には,学術的な研究成果だけでなく,実務界で行われた実証実験の報告書や,民間調査会社の調査レポート,実務者向けの手引書などの資料にもあたり,そこからその時代ごとのインターネット広告に対する認識や解釈を抽出していく。


 本稿においては,主にパソコンで閲覧するWebサイト上に掲載される広告をその検討の対象とし,メール広告,携帯電話を対象としたモバイル広告アフィリエイト・プログラム等は最低限必要な範囲での言及に留めることとする。

  • 参考文献

[2]Robbin Zeff,Brad Aronson(西和彦訳):『インターネット広告論』流通科学大学出版,pp.14-15, (2001).



目次および出典